顎から音がしたり、顎関節が痛くてお口を大きく開けられなくなることもある、「顎関節症」。
先月のブログでは、顎関節症の症状・原因(発症のメカニズム)についてご説明をさせていただきました。
今回は、お困りの方も多い顎関節症の治療・予防方法をご紹介します。
目次
■顎関節症はどこで治療を受ければイイの?
◎まずは、歯科を受診しましょう
顎がカクカクする、顎関節から音が鳴るなど、顎関節症が疑われる場合は、まずは、歯科を受診しましょう。
◎口腔外科や精神科での治療が必要になることも
顎関節症は発症の原因・治療方法が多岐に渡ります。原因によっては、口腔外科、精神科(ストレスが解消できない場合など)での治療が必要になることも。
■歯科で行う顎関節症の処置・治療
歯科医院では、原因や顎関節の状態に応じ、以下のような処置・治療を行います。
歯科では、処置・治療を通じ、顎関節症の症状の緩和、および、顎関節の正常化(顎関節がスムーズに動くようにする)を図ります。患者さんや原因によっては、以下の中から複数の処置・治療が必要になる場合も。
1.マウスピース(ナイトガード、スプリント)
顎関節にかかる負担を軽減する処置
患者さんの歯並び・噛み合わせ、顎の状態に合わせて作製したオーダーメイドのマウスピースを装着する治療法です。
就寝時を中心に、マウスピースを装着することで顎関節にかかる負担を軽減します。
2.咬合調整(噛み合わせの調整)
噛み合わせの乱れが原因の場合
歯の噛み合わせ面となる歯のエナメル質をやすりで削り、噛み合わせを調整します。
噛み合わせを調整することで、顎関節にかかる負担を軽減すると共に、顎関節の痛みなどの症状の緩和を図ります。
3.歯科矯正
歯並び・噛み合わせの乱れが原因の場合
歯科矯正(マウスピース矯正、ブラケット矯正)を行い、歯並び・噛み合わせを改善します。
歯並び・噛み合わせを改善することで、顎関節にかかる負担を軽減すると共に、顎関節の痛みなどの症状の緩和を図ります。
4.お口の筋トレ(口腔筋機能療法:MFT)
誤ったお口の使い方・偏った噛み方などの癖が原因の場合
お口の筋トレ(MFT)により、誤ったお口の使い方・偏った噛み方などの悪い癖の改善にアプローチします。
正しいお口の使い方を身につけることで、顎関節にかかる負担を軽減すると共に、顎関節の痛みなどの症状の緩和を図ります。MFTにより、顎関節症の再発を防ぎやすくなる効果も期待できます。
5.クリニカルマッサージ(歯科医院などの医療機関で行う顎・こめかみ周辺のマッサージ)
顎周りの筋肉の緊張が強い場合
噛む筋肉である咬筋、側頭筋など、顎・こめかみ周辺の筋肉をマッサージします。
顎・こめかみ周辺の筋肉へのマッサージにより、顎関節の痛みなどの症状の緩和を図ります。
6.鎮痛薬
顎関節の痛みが強い場合
鎮痛薬の内服により、顎関節の痛みの緩和を図ります。
■口腔外科、精神科での治療が必要になる場合も
◎顎の状態、ストレスなど、原因に応じた診療科目で治療を受けることが重要です
歯科での処置・治療に加え、顎関節症では、原因によっては口腔外科(or形成外科)、精神科(or心療内科)での治療が必要になる場合も。
[口腔外科(or形成外科)での治療が必要になることがある顎関節症]
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顎の骨格異常(上下の顎の位置のズレなど)が原因で顎関節症が起きていると考えられる場合
[精神科(or心療内科)での治療が必要になることがある顎関節症]
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ストレスが強く、歯科や口腔外科での処置・治療のみでは顎関節症の症状が十分に改善できない場合
■顎関節症の予防方法
◎歯・歯周組織を健全に保ち、正しいお口の使い方を身につけることが大切
以下のような食べ方の癖があると、顎関節症を発症しやすくなります。
[顎関節症をひき起こしやすい食べ方]
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大きくお口を開け、ほおばって食べることが多い
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片側の歯ばかりで噛むなど、アンバランスな噛み方で食べている
顎関節症を防ぐには、歯・歯周組織を健全に保ち、全体の歯を使ってバランス良く食べ物を噛むことが大切です。バランス良く噛むことで、顎関節の関節円板がずれる(=顎関節症の発症のメカニズム)リスクを低減できます。
なお、歯周病やむし歯などで歯を失ってしまった場合は、人工歯根により高い安定性を持つインプラントにすることで、天然歯の80~90%程度、噛む力を補うことが可能です。
バランス良く食べ物を噛むことに加え、舌癖・口呼吸・頬杖などの悪い癖がある場合は、お口の筋トレ(MFT)を中心とした歯科での治療が必要になる場合も。MFTを通じて正しいお口の使い方を身につけることで、顎関節症の再発を防ぎやすくなります。
◎できるだけストレスを減らし、顎関節にかかる負担を軽減しましょう
ストレス(ストレスによる歯ぎしり・食いしばり)は顎関節症の大きな発症原因の一つです。顎関節症を防ぎ、顎関節にかかる負担を軽減するためには、できるだけストレスを減らすことが重要になります。
とは言うものの、ストレス社会である日本でまったくストレスを感じずに生きることは難しいかもしれません。
難しいかもしれませんが、以下のような点をご参考に、できるだけストレスを減らすことで、ストレス(歯ぎしり・食いしばりによる、顎関節や顎周りの筋肉への過剰な負荷)が原因の顎関節症を防ぐ効果を期待できます。
[ストレスの減らし方(例)]
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物事に対し、あまり神経質にならないようにする
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1日7時間以上、睡眠を取る
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自分なりのストレス発散方法を見つける(お酒やギャンブルはかえってストレスを増やすおそれがあります)
【顎の違和感、顎関節の痛みがある方は当院までご相談ください】
今回は「顎関節症の治療・予防方法」について、お話をさせていただきました。
顎関節症が疑われる場合は、まずは、歯科医院を受診しましょう。歯科医院を受診することで、症状の緩和にアプローチしやすくなります(※)。
(※)顎の骨格異常、ストレスなど、原因によっては
歯科以外での治療が必要になるケースがあります。
顎の違和感、顎関節の痛みがある方は当院までご相談ください。